ハイデンシティ・リニアコンバーターシステムを搭載したESシリーズの
CDプレイヤー。
D/A変換部には新開発のハイデンシティ・リニアコンバーター・システムを採用しており、D/Aコンバーターには新開発のCXD-2552を採用しています。
CXD-2552は、従来のマルチビット方式で用いられた複数個の電流源とそれに対応した電子スイッチでは構成されておらず、1つの電流源を1つの電子スイッチでオン/オフする構造となっています。そして、電子スイッチの動作速度を高くしてパルスの数を十分に多くし、パルスの疎密波によって音を作り出しています。
パルスD/Aコンバーターではパルスの数が多いほど滑らかな波形となり、性能も向上します。このパルスの数はパルスD/Aコンバーターのマスタークロックで決められており、CXD-2552ではマスタークロックの最高動作周波数50MHz(毎秒5000万パルス)を達成しています。また、パルスのハイとローの現れ方を決めているデジタル演算回路には、
ソニー新開発のSony Extended Noise Shapingデジタル演算方式を採用しており、高密度なパルス列を実現しています。
この方式によって高いダイナミックレンジを達成するとともに、微分非直線歪やグリッチ、ゼロクロス歪の根本的に無い癖の無い音質を得ています。さらに
CDP-X77ESではパルスD/AコンバーターCXD-2552を2個パラレルで使用しており、電流値を2倍とすることでSN比を高めています。
ハイデンシティ・リニアコンバーター・システムはオーバーサンプリング演算とSony Extended Noise Shaping演算方式の2ステージ構成でD/A変換をしています。
オーバーサンプリング演算には45ビットノイズシェイピングデジタルフィルターであるCXD-1244を搭載しており、全ステージにわたるフルノイズシェイピングと十分に大きい演算レンジによってより正確なD/A変換を可能にしています。
デジタル信号で問題となるジッターを解消するため、ダイレクト・デジタル・シンクを搭載しています。
ダイレクトデジタルシンクではデジタル信号をマスタークロックの精度に整え直すことジッターを解消し、信号の位相の乱れを防いでいます。また、この回路はパルスD/Aコンバーターのチップ上に形成されており、ジッター除去をパルスD/Aコンバーターの最終段である電子スイッチの直前で行うことでジッター発生の要素を原理的に無くしています。
デジタル回路には4世代目LSIにあたるCXD-2500を搭載しています。
CXD-2500では従来外付け構成となっていたRAMを容量32kbitに増やした上で内蔵し、1チップ化しています。これによりデジタルデータの交換をLSI内部で行うため、不要な輻射ノイズを大幅に低減し、
オーディオ回路への干渉を減少させるとともにエラー訂正能力も向上しています。
ピックアップ部にはRF
アンプを内蔵した新開発の光ピックアップを採用しており、低インピーダンスの信号出力を可能にすることでローノイズ・高安定化を実現しています。
サーボ回路にはSサーボIIIを搭載しています。
SサーボIIではサーボ電流のノイズ成分をローパスフィルターで除去しており、滑らかなサーボ電流を供給しています。これにより電源部からの電力供給が安定し、オーディオ回路への影響を抑えています。
シャーシ部にはFBシャーシを採用しています。
FBシャーシではシャーシ素材に十分な厚みと強度を持つメタル材を使用するとともに、外周を取り囲むフレームや、フロントとリアを渡す前後のビームによってシャーシ全体を強固にジョイントしています。これにより内外の振動による回路部への悪影響を低減しています。
さらにシャーシ内部に銅メッキ処理を施し、天板には高剛性アルミトッププレートを使用するなど、非磁性化も徹底しています。
メカニズム部にはアルミダイキャストベースユニットを採用しています。
共振モードが低く、高い強度と加工精度が得られるアルミダイキャストで不要振動の発生を低減しています。さらに、高粘弾性ゲル入りダブルサスペンションによるフローティング構造を採用することで外部振動を徹底的に排除しています。
スピーカーからの音圧の影響を排除するため、ディスクトレイが収納されるフロントパネルの開口部に特殊ゴム材によるダンパーを設け、トレイの気密性を向上することでフロント面から入り込む空気振動の影響を排除しています。
また、ディスクトレイには
CDP-X55ESなどに採用されたGベースユニットと同じ素材のGトレイを採用しており、組成が大理石と同じ炭酸カルシウムを特殊樹脂に加えてグラスファイバーで強化した素材を用いることで不要な外部振動がディスクに加わるのを防いでいます。
内部コンストラクションは振動やノイズを排除するよう検討が加えられており、FLディスプレイから発生するノイズの影響も小さくないと考え、回路基板から離れたメカデッキの下部にこれを配置しています。また、メカデッキ自体も床からの振動を避けるために脚部から離れたセンター寄りとしています。
さらにCDP-X77ESでは、シールド板を挟んで上下に分離したデジタル基板とオーディオ基板のセパレートシート構成や無反発ゴムを組み合わせたファインセラミックインシュレーターを採用しています。
電源部はトランスを2個搭載しており、デジタル・サーボ部とオーディオ部を独立給電することで電源を介しての干渉を排除しています。また、トランスの振動が
オーディオ回路部に伝わるのを防ぐため、4箇所にゴムダンパーを使用してフローティング設置しています。
さらにCDP-X77ESではトランスにシールドケース入りの重量級トランスを使用するとともに、トランスコア全体をポリブタジエン樹脂に珪砂を混合した硬化充填剤で片目、微細なトランスの鳴きも抑えています。
オーディオ回路は信号の流れに沿ったツインモノ構成となっており、チャンネル間の位相ズレや相互干渉を排除しています。
また、
CDP-X77ESでは基板内振動や静電浮遊容量による音質劣化を未然に防止する、温湿度特性にも優れた高強度ガラスエポキシ製ES基板を使用しています。