【質実剛健なデザイン】
革の上に革を重ね、ステッチを二重にして縫い付けてあります。
重ねた革の内側は「くるみ玉」で処理し、耐久性を持たせてあります。くるみ玉の丸みが武骨さにプラスされて自然な上質感が生まれています。
シンプルな素材と堅牢な印象が相まって質実剛健な仕上がりになっています。
【レザーについて】
ステアハイドレザーを使っています。生後2年以上の雄牛の革で、牛革の中でも特に厚みがあって繊維も密集していることから滑らかで丈夫な革が採れます。
傷がつきにくく摩擦に強いので使い込んでも古びることがありません。むしろ時間と共に艶と光沢が増して味わい深くなっていく革です。
【経年変化の魅力】
ステアハイドは経年変化が楽める革です。
手の脂や陽の光で色味が深まり、使う人や環境によって異なる表情を見せます。
油分が豊富に含まれているので、そのまま使っていても艶感は増しますが、クリームによる定期的な保湿でもグッと雰囲気が変わってきます。
飴色に近づくころ、革は滑らかになり、しっとりと手に馴染んできます。このとき、革の繊維は強固に締まり、はじめのころより丈夫になっています。
【クリームメンテナンスについて】
革は乾燥によってヒビ割れの原因になるので、定期的にクリームを塗ってください。
目安は月に1度程度ですが、表面の乾燥を感じたら迷わず塗ってください。
直後は油分でベタ付きますが次第に浸透して落ち着きます。
新品の革に塗ることで保護膜を作ることができますのでお勧めです。
【ずっと使える5番ファスナー】
ファスナーは務歯が大きく丈夫な5番ファスナーにしてあります。
一般には小さくて滑りの良い3番を使いますが、壊れやすいのが欠点で、ながく使っていると噛み合わなくなることがあり、真ん中から開いてしまっている財布も見かけます。
こういったことから、安心して使っていける5番ファスナーを採用しています。
【引き手へのこだわり】
ファスナーの引き手にステッチを入れることで引っ掛かりを作ってあります。力の入りにくい小さなパーツですが、ずいぶん引きやすくなっています。
断面は磨き処理して滑らかに仕上げてあります。一番使う部分だからこそ手触りにもこだわりました。同様の理由から小銭入れの引き手も同じ作りにしてあります。
【ファスナーのライン】
閉じた状態のファスナーを見れば職人の技量がわかります。ファスナーのラインを直線に仕上げるには、高度な技術が必要だからです。
職人による違いがハッキリでる箇所でもあり、微妙に曲がっている財布は少なくありません。
ラインの歪みはファスナーの開閉に影響するので、長期的に使っていく財布の場合は特に注意が必要です。
当店が日本の工房に制作を委任する理由は、技術力の高さ以上に「質実剛健」という商品のコンセプトを確実に共有できるからです。
【見せることのできる内側】
ガバッと開く左右対称の収納スペースからは、武骨な男らしさを感じます。
最近流行しているユニークな収納に楽しさはあるものの、内側も人目に付きますので、男性らしく落ち着いたデザインがベターでしょう。
収納力も高く、カードは12カ所、札は4カ所あり、両サイドのマチなしポケットは隠しポケットとして使えます。センターには頻繁に使うカード専用のポケットもあります。
ガバッと開く構造なので、お札やカードを一目で見渡すことができますし、なにより左右対称ゆえの収納の美しさは、この設計だけの持ち味です。
念引き:
カード入れのヘリに引かれたラインを念引きといって、内側に引き締まった印象を与えるデザインです。使い勝手に影響しませんが、「シンプルだからこそ作りこむ」という、この財布のコンセプトを感じ取れる細工になっています。
小銭入れ:
ラウンド長財布は構造上、小銭入れの入り口が大きく開きません。このため、しっかり指が入らず、小銭がつかみにくいことがあります。これが会計時にもたついてしまう原因の一つです。このラウンド長財布は、片マチを採用することで、入り口が大きく開いて小銭をしっかりつかむことができます。また、ナイロンなどの裏地を貼っておらず、革本来の裏地の使用感がスエードのようで抜群です。
【フルレザー】
布や芯材など、劣化の早いパーツを使わず、本革のみで仕上げてあります。これによって長期間の使用に耐えうる、頼りがいのある財布になります。
そしてフルレザーのもう一つの魅力は「自然なエイジング」です。すべてが革なので全体が均一に変化して、風合いと手触りが自然に馴染んでいくのです。
一方、劣化する布や芯材を使ってしまうと、使い込んでいく過程で違和感が出てしまいます。
じっくりとエイジングを楽しんでいく計画であれば、フルレザーを選択していただくのが好ましいと思います。
【コバ処理に妥協しない】
コバとは革の裁断面のことですが、様々な処理によって耐久性を持たせることができます。
この長財布では最も手間のかかる「切り目本磨き」を採用しており、通常と比べて滑らかさと透明感がハッキリ違います。
「神は細部に宿る」と言いますが、財布の存在感の差はコバ磨きの差といっても過言ではありません。
【美しい蛇腹面】
財布の蛇腹面は使っている本人にとって死角です。ですが会計で財布を開いた際、相手の目に最も大きく入り込むのも蛇腹面です。
したがって、ここが雑に仕上げられていると、せっかくの財布が残念な印象になりかねません。
逆に、蛇腹面が美しければ、周囲の人も「良い財布を使ってるな」と一目でわかります。
この長財布の蛇腹面は「バランスよく開く」「コバの光沢」「細かなステッチ」の3つにこだわって設計してあります。